Crystallization of worthless / 無価値の結晶
2021
レジン, 蝋, 顔料
W300mm H300mm D50mm
「金継ぎ」とは、日本で使われている、割れた器を修復する技術である。漆と金を使い、器の割れを繋ぎ合わせ、欠けを埋めていく。
器は生活に寄り添う、用の美の結晶であり、金継ぎは、そんな器への気持ちを未来へ繋ぐもの。言うなれば、価値あるものに想いという時間を纏わせ、そのものの価値をさらに高めることに他ならない。
「侘び寂び」と言う、西洋のモダニズムに似て非なる日本特有の概念。このミニマルな美しさに内包される大きな要素は時間である。
本作は、異なる時間軸を持つ素材、つまり凝固点や融点の異なる素材である、レジンや蝋、顔料を混在させながら製作したパネルが元になっている。
そのパネルの割れた偶然性に溢れた線を「金継ぎ」によって表しにし、修復していく。
生活の時間を内包しない、単なる無価値のものを破壊し、一方でその時間性だけを肯定し、未来へ継いでいく。
これは、一見価値のないものを時によって価値化する取り組みであり、無価値な時間の結晶である。
What He Made
「無価値な時間の結晶」は、日本の伝統的な陶磁器補修技法である金継ぎがどのような時間と関連しうるかを考察するために山崎晴太郎が制作した作品である。
画面を構成しているのは、蠟、エポキシ樹脂、顔料、漆、そして金である。
本作品の支持体である蠟とエポキシ樹脂はどちらも液体であったり固体であったり気体であったりすることが出来るが、これらの相転移が発生するための条件は全く異なっており、熱的に両者は異なる時間軸の中にある。
異なった時間軸の中にあるがゆえに、両者の間には亀裂が生まれる。この亀裂を埋めるのが、漆と金による金継ぎである。
離れてゆく二つの時間を繋ぎ止めるために動員されたはずの金継ぎは、しかしながらそれが金継ぎであるがゆえに、それ自体が景色という独自の時間を生み出してゆく。
これらの素材のありようはまた、現代社会において個人が幾つもの時間を同時に生きることを余儀なくされている現象の寓意でもある。我々は少なくともデジタル空間の時間と自らの肉体の時間の両方を同時に生きなければならず、これは不可避的に個人の中での時間の破断を呼び起こす。だが、その破面を柔軟に接合しうる何かがもたらされた時、個人の中にある複数の時間とその接合部は、全体としてその人だけの形と色、そして美しさを生むのかもしれない。
Why He Made
山崎晴太郎はこれまで一貫して、我々の生きる世界の中に存在する(あるいは存在しうる、存在しえた)幾つもの時間の可視化、そしてそれらの時間群がお互いにいかにして関連しうるかの検討に取り組んできた。
「無価値な時間の結晶」において山崎晴太郎が取り組んだのは、日本列島において発展してきた金継ぎという工芸品修復の技法が生み出しうる時間群の帯域幅を検討する作業である。
金継ぎは元々、破損した陶磁器の器を修復し、機能を回復させるための技法として考案され、発展してきたものであり、その基本的な役割は「破損前の時間」と「破損後の時間」を「機能の回復と維持」によって接合することにあった。金継ぎは器の機能という時間が破損によって断絶した場所に現れ、器の機能を回復させることで、新たな時間と美的価値をその後に生み出す。ここで金継ぎが時間の接合面として必要としているのは、器として機能する・機能しないという名義尺度である。
一方、本作品において金継ぎが接合しているのは、二つの時間軸を同時に孕んでこの世界に現れ、しかし早々に分裂することを宿命づけられた、それ自体には何の機能も価値も持たない画面である。この画面は機能を持たないが故に、器の金継ぎとは異なり、前後の時間を接合する金継ぎは行い得ない。
しかしながら、並行し離れていこうとする二つの時間を金継ぎにより接合することで、新たな時間と、そして機能という名義尺度に接しない美的価値を生み出すことが可能となる。
How He Made
蠟と顔料とエポキシ樹脂を混練したものを型に流し込んで画面を作成し、満足出来るテクスチャが得られた段階で乾燥させる。蠟とプラスチックはこのような方法では化学的に結合せず、また靭性や展延性が異なるため、乾燥するに従って画面の中には予測出来ない形状の亀裂が発生する。更にこの状態の画面を床に投げつけて破断させた上で、破面に刻苧漆を詰めて金粉を撒く、いわゆる金継ぎを行ったものが本作品である。画面右上の大きな金継ぎは、画面の破断時に紛失した断片を埋めた部分である。
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