山崎晴太郎は、自らの作品を通して複数の「時間」を「可能性の束」として同居させることを試みています。
その作品群は、複数の「時間」の境界線に現れるものを提示することで、社会、物質性、時間、欲望、消費といった、絶対性を伴うのと我々が捉えがちな事物についての再考を促します。
和紙、墨、漆、樹脂、砂、ワックス、顔料など、彼の作品に使用されるあらゆる素材、そしてそれらの素材が持つテクスチャと記号性には、固有の時間の流れが内包されています。
これらをMixed mediaとして形づくられる個々の作品には、複数の「時間軸」が併存することになります。
日本料理の職人が徹底的に素材に向き合うように、彼もまた作品の素材のそれぞれに徹底的に向き合い、それらの素材が内包する時間を見つめ続けています。
そして、それらの素材の「時間」の流れが一つの作品の中で並存するとき、私たちは、この世界のすべての「時間」には固有の物語と性質があり、人間がそれをどのように扱うことができ、またできないかを知ることになります。
また、複数の「時間」が「可能性の束」として私たちの前に現れる時、我々はそこにも一つの新たな「時間」が、より大きな物語として動き始めるのを目の当たりにすることになります。
それらの物語は、この社会の見せかけの絶対性の中に埋もれてしまっていた、新たな可能性の物語たちなのです。
NEWS LETTER 新作のお知らせ、展示情報などの最新情報をメールにてお知らせします。